RHRリテラシー研究所 2025.03.15発行(ver.2)
────◇◆◇コンテンツ◇◆◇─────
1.ポーランド:ワルシャワ中心部に中絶クリニック開設 – 政府への挑戦
2.フランス:中絶合法化50周年と「中絶薬の父」のメッセージ
3.日本の中絶アクセス:自宅での服用はいつ可能になるのか?
4. 緊急避妊薬 OTC 解禁に向けた議論の進展
5.アメリカ:安全な中絶薬を事前に入手するネットワークと親の同意撤廃の影響
6.アルゼンチン:中絶アクセスが「チェーンソー」政策で脅かされる
7.『中絶薬完全ガイド』を刊行
8. ボランティア募集中
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1. ポーランド:ワルシャワ中心部に中絶クリニック開設 – 政府への挑戦 ◇◆◇────
3月7日、ポーランドのワルシャワ市内の国会議事堂前に新たな中絶支援クリニックが開設されました。これは、政府が中絶合法化を約束しながら実行できていないことに対する市民の挑戦でもあります。
活動家たちは、ここで中絶薬の服用をサポートし、安全な環境を提供しています。年間4万4千件の中絶支援を行う団体が運営しており、「グループ中絶」を通じてスティグマをなくすことを目指しています。開設直後には保守派の抗議が発生しましたが、警察がクリニックを保護しました。
この動きは、市民の手でリプロダクティブ・ライツを確保しようとする新しい試みです。今後の動向を見守っていきましょう。
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2. フランス:中絶合法化50周年と「中絶薬の父」のメッセージ ◇◆◇────
この1月、フランスは中絶合法化50周年を迎えました。ミフェプリストン(RU-486)を開発したエティエンヌ=エミール・ボーリュー氏(98歳)は、「女性の安全な中絶の権利は不可逆的だ」と語りました。
中絶薬の開発当初、特にアメリカでは「死のピル」と非難され、抗議活動や暴力事件が発生しましたが、現在では多くの国で安全な中絶手段として認められています。
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3. 日本の中絶アクセス:自宅での服用はいつ可能になるのか? ◇◆◇────
2023年に日本でも承認された経口中絶薬ですが、一部条件付きで、2 剤目(ミソプロストール)の服用後、医療施設から16km圏内自宅がある場合などの要件を満たす場合には、帰宅して経過を見ることが可能になりました。
これは医療機関の負担を軽減し、患者の選択肢を広げる措置ですが、依然として自宅での服用は厳禁で、医師の監督が必須だとされています。黙っていては、海外のように自宅で服用できるようになる日はやってきません。さらなる規制緩和を求める声を上げ続けていく必要があります。
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4. 緊急避妊薬 OTC 解禁に向けた議論の進展 ◇◆◇────
昨年秋に試験的な薬局販売が拡大された緊急避妊薬ですが、2025年度内も試験販売が継続される予定です。また、OTC(処方箋なし)での一般販売を求める声が高まっており、政府は 2026 年度の制度改正を視野に入れ、パブリックコメントの募集を予定しています。薬剤師の側からも、緊急避妊薬のOTC化を望む声が上がり始めています。
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5. アメリカ:安全な中絶薬を事前に入手するネットワークと親の同意撤廃◇◆◇────
①「A Safe Choice Network」設立アメリカでは、リプロダクティブ・ライツが政治的に脅かされる中、「A Safe Choice Network」が発足しました。このネットワークは、中絶薬(ミフェプリストンとミソプロストール)を事前に入手できる仕組みを提供し、法律の変更による影響を受ける前に安全な中絶手段を確保できるようにしています。
② 親の同意撤廃で中絶の遅れが解消(マサチューセッツ州)2020年に施行された「ROE Act」により、16~17歳の未成年者の中絶に親の同意が不要になりました。その結果、手術を受けるまでの妊娠週数が平均60日短縮されたことが研究で示されています。
日本でも、未成年者のリプロダクティブ・ヘルスの権利について議論が必要ではないでしょうか。
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6. アルゼンチン:中絶アクセスが「チェーンソー」政策で脅かされる◇◆◇────
2020年に中絶を合法化したアルゼンチンですが、新大統領ハビエル・ミレイの「チェーンソー経済」政策(大規模な財政削減政策) により、性と生殖の健康プログラムの予算が大幅に削減されました。その結果、以下の問題が発生しています。
中絶薬の供給が65%減少し、一部の女性は入手できなくなった。
避妊具の供給減少により、望まない妊娠が増加。
女性が経済的理由で中絶を選択するケースが増加。
政府は「財政再建が最優先」としつつも、中絶反対の立場を強めています。法律が維持されても、実質的にアクセスが制限される可能性が高く、日本でも同様の問題が起こる可能性があるため注視していく必要があります。
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7. 『中絶薬完全ガイド』を刊行 ◇◆◇────
『中絶薬完全ガイド 知る・考える・選ぶ』(塚原久美著、RHRリテラシー研究所出版、刊行Amazon Kindle)を刊行いたしました。Kindle版はワンコインの500円(税込み)、ペーパーバック版は1500円(税込み)です。
中絶薬について、日本ではまだ十分な情報が一般に知られていません。そこで本書では、中絶薬の仕組み、国際的な動向、日本の現状、そして実際の使用に関する知識を網羅的に解説しました。
医療関係者、支援者、フェミニストはもちろん、これから中絶薬を使おうか迷っている人にとっても、知る・考える・選ぶための信頼できる情報源となるよう心掛けました。本書が、あなたにとって「選択する力」を持つための一助となりますように。
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8. ボランティア随時募集中! ◇◆◇────
RHRリテラシー研究所では、随時ボランティア・スタッフを募集しています!
リプロに関する情報提供やイベント開催などの活動をしています。関心のある方、どうか力を貸してください。
お問合せ: rhr.lit.lab@gmail.com ホームページ: RHRリテラシー研究所
編集後記
今年から来年にかけて書籍出版が続きそうです。その合間にRHRリテラシー研究所のワンコインシリーズも続けていくつもりだし、noteも始めたし、目の回るような忙しさですが、とても充実した日々を過ごしています。
知ることは力になります。ぜひお友達にもリプロ・ニュースの輪を広めてください。お申し込みは上記のお問い合わせメールアドレスまで、どうぞよろしくお願いいたします。(K)

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